夜に閉じ込められて眠れない夜は危険。ろくなことを思い出さないから。 だけどそんな人生悲しいじゃない? ふと思うことが「ろくなことじゃない」なんて。 楽しかったこと。幸せだったこと。 それを考えてみようよ。 あるでしょ? 記憶の中に、いくつでも。 それより先に、辛いこと悲しいこと悩んだこと、 そういうマイナス要素を思い出す。 その思考回路がまずダメらしい。 人間誰でも一度は本気で「死にたい」って思うものだと思ってた。 だから自分がそう思っても、それは特殊なことじゃないと信じてた。 最近身近な人にアンケートをとったら、違ってた。 死にたいって本気で思ったこと、ある人の方が少なかった。 どうして? 思春期ごろ、死にたいって思わなかった? 辛い恋をしたときとか、受験が上手く行かなかったときとか。 でも、思わないらしい。みんな。 辛いとか悲しいとか、それは「死にたい」に直結しないらしい。 じゃあさ、高校生のとき、普通に「自分が死ぬときは自殺だ」 って思ってた自分は何なんだろ? 当たり前のように。 動かしがたい宿命を受け入れる、そんな穏やかな気持ちで自死を思った。 わたしはいったい何者だった? 今はどう? 死にたいって思ってる? 思ってない。 死にたくないよ。わたしはまだ終われない。 なのに、電車を待つホームで、ふと「飛び込んだら、終わる?」って思う。 高いビルに登ればまず「ここから落ちれば、生還しないな」って思う。 車を運転していると、「アクセルを踏みすぎたらどうなるんだろ?」って思う。 死にたくないのに。 自分は自分の思考にとり殺される気がする。 日常的に死を思う、その気持ちがいつかわたしを殺すかもしれない。 死にたくないのに。 ・・・死にたくないのに? 自分自身の存在への嫌悪感。 それでも捨てきれない自己愛。 自己愛に応えられない不甲斐ない各種才能。 瞬間で入れ替わる、プライドと自己嫌悪。 そういうものは慢性化して、漠然とした不安に変わる。 底に凝って心を圧迫する。 最近自分は幸せだ。 ・・・この幸せを失ったら、今度こそ立ち直れない。 失いかけているの? そんな心配があるの? そうじゃないでしょ? そんな取り越し苦労こそが破綻を生むんだって、嫌というほど学んだはずでしょ? ワカラナイ。 自分の心がわからない。 眠れない夜に閉じ込められて、つまらない考えに縛られている。 夜は生暖かく、何かを促している。 わたしは一人、春の夜の片隅で、自分をもて余してる。 涙さえ流すことはできずに。 ジャンル別一覧
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